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なんだか頭がクラクラする……。視界もぼやけているし、真っ直ぐ歩けなかった。目の前に現れたベンチのような場所に座り込むと、そのまま目を閉じた。
辺りの騒がしい声すらはっきりとは聞き取れず、まるで夢の中にいるような気分になる。
いや、もしかしたら本当に夢なんじゃないか? それなら納得するくらい、全ての感覚が麻痺しているようだった。
そんな時、体がふわりと浮くような感じがして誰かの声がする。
『大丈夫ですか?』
俺の額を撫でる手がひんやりとしていて心地良い。
うん、たぶん大丈夫。だってこれ夢だし。
『……相当酔ってるみたいですね……』
そうそう、飲み過ぎたから幸せ気分なんだ〜ってあれ? もしかして膝枕とかされちゃってる? うわぁ、憧れの膝枕じゃん。どうりで居心地良いわけだ〜。
まぁどうせ夢だしな。ちょっとお触りでも……なんて思って触ろうとしたら、俺の手に平手打ちが飛んでくる。その痛みがあまりにも現実的で、一瞬怯んだ。
『……本当に先輩はいつもそう……昔から頭がお花畑なんだから……』
それは否めないなぁ。あーあ、なんて柔らかくて温かいんだろう。この際誰でもいいから……俺と付き合ってくれないかなぁ……。
『誰でもって……まだそんなこといってるんですか? あの頃から全然成長してないじゃない……。一体何のための恋人なんですか……意味わかんない……』
何のって、そりゃあ恋人がいたらそれだけで満たされそうじゃん。一緒に遊びに行ったり、イチャコラしたりさぁ。いいなぁ、彼女欲しいなぁ。
『……誰でも良かったら、好き同士かわからないじゃない……。ケンカばっかりしちゃうかもしれないし、一緒ににいても楽しくないかもしれない……』
……むむっ、君ってめちゃくちゃ良い子だねぇ。ねぇ、夢の間だけでもいいからさ、俺と付き合ってよ。
『……馬鹿にしないでください。気持ちがないくせに付き合おうだなんて……どうせすぐに別れちゃうに決まってる』
え〜、そんなことないよ〜。俺、絶対君なら好きになると思うけどなぁ。だって君、さっきから俺の頭をずっと撫でてくれてるし、なんだかんだ優しいし。
『だってそれは……先輩が倒れてたから放っておけなくて……』
ぼんやりとした視界の中で、頬を染めながら唇を噛み締める女の子が目に入る。そんなふうに唇を噛んだら切れちゃうよ……。
そう思った瞬間、俺はつい彼女の顔を引き寄せてキスをした。しっとりと温かい感触にホッとする。キスするなんて何年振りだろう……ヤバい、もっとしたくなる……。
指先に絡む長い髪と、フローラルの香りにうっとりと目を伏せる。しかしその幸せな時間も、あっという間に終わってしまう。頬に平手打ちを浴びせられたのだ。
『信じられない……! その気もないのに、そういうことをしないでください! 先輩は心から好きになれる人をちゃんと見つけるべきよ!』
い、痛い……。
『でも……もし私が誰だかわかったら……』
しかし最後の方の言葉は聞き取れなかった。彼女はすっと立ち上がり、俺の頭は床に叩きつけられる。そして完全に夢の中へと堕ちていったんだ。
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