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「エリシア、連れ出してくれる?」 「御意」  なずなにエリシアと呼ばれたのは、紅葉の国側の案内人。彼女は素早い動きでわたしたちの前に立った。 「待て」  その時、水先が手にしていた杖が変形した。ムチのようにしなった杖が、エリシアの体を絡め取る。 「妹よ、慌ててはいけない。我らの目的を忘れたのかな」  驚いて声も出ない。彼はふざけることはあっても、暴力的な態度を取ることは一度もなかった。それなのに、今は明らかにわたしたちの前に立ちはだかっている。 「どういうつもり? わたしたちの邪魔をしようとしているように見えるけど」 「逆にお尋ねしましょう。これがあなたが望む道なのですか?」  質問を返されて言葉に詰まる。わたしは別に駆け落ちをしたいわけじゃない。でも、彼はこの物語の行く先を決めるのはあくまでわたしたちだと言っていたはず。 「あなたの最大の目的は、この物語を終わらせ、元の世界に帰ること。駆け落ちなどと、奇をてらう必要はないはずだ」 「わたしたちの勝手でしょ。駆け落ちして二人が幸せになる結末だって面白いと思うけど」 「面白くありませんね。それではこの物語はあっさりと終わってしまうではありませんか」  水先の背中から、黒い翼が生え、わたしたちを取り囲むように変化した。
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