第一話

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第一話

美しい風船が ふわふわ 空に昇っていく ピンク 青 黄緑 白 水色 レモン色 夢のカケラみたいな 無数の風船が  澄み切った秋の空に 揺れながら 消えていくのを 立ち止まって見上げていると 「あれは 花ですか?」 誰かが そう質問した 僕は 驚いて 声が聞こえた足元に目を向けると かわいい羊が 僕を見上げている 「あれは花じゃない」 僕は そう言ってから 少し不安になる 本当は花かもしれない 僕が風船だと 勘違いしているのかもしれない 「いや 花かもしれないな」 そう 言い直して もう一度 空を見上げると もう風船は 一つも見えなかった 僕は急に 不安になり 足元の羊を見た よかった 羊は そこにいた 風船みたいに 消えてしまったら 寂しい と 思ったんだ
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