恋人になるまで その2

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恋人になるまで その2

20分後。 ジャグジーバスに 岸野を後ろから抱え込む体勢で浸かり、 ゆっくり足を伸ばした。 「気持ちいいな」 「うん」 まだこの状況に慣れずふわふわしている 岸野の濡れた頭に顔を寄せ、 僕は何度も髪にキスをした。 「高校、楽しかった?」 「川瀬がいなかったから、楽しくないよ。 だから、勉強ばかりしてた。僕に彼氏が できたのは、大学時代だしね」 「共学なのに、女子トモはいなかったの」 「何故か、葵ちゃんて呼ばれてた」 「何だ、女子トモいたんじゃん」 「いじられてただけだよ。川瀬は? 埼玉の男子校はどんな感じだった?」 「んー、僕も岸野と似たようなものかな。 勉強ばっかりで。修学旅行くらいかな、 楽しかったのは」 「どこに行ったの?」 「長崎。やっぱり、坂だらけだった」 「へえ。僕は、北海道。札幌の自由時間に、 スープカレーを食べたよ」 「楽しそうだな」 「川瀬と、旅行行きたいなあ」 「どこに行きたい?」 「まだ行ってなくて、行きたいのは、 沖縄かな」 「僕も沖縄は行ったことない。行こうか」 「うん。台風シーズンを避けてね」 「夏休み、合わせて行く?うち、6月から 9月の間で1週間、取得できるよ」 「うちも土日挟んで1週間。6月から10月 まで。じゃあ、時期が来たら擦り合わせね」 「うん」 岸野をこちらに向かせ、唇にキスを落とす。 「川瀬って、すごく愛情深いんだね」 「そうか?普通だと思うけど」 「川瀬に強気でアプローチしたけど、 まさかこんなに早く両思いになれるなんて 思ってもみなかったよ」 「確かに強気だったな。もうそろそろ風呂、 出ようか。ベッドに行こうぜ」 岸野の手を引き、浴室を出た。 「お菓子メーカーの総務か。そう聞くと、 岸野らしいのかな」 ベッドの上でドライヤーを使い、岸野の髪を 乾かしながら、就職先の話をしていた。 「川瀬こそ、外資系の金融機関だなんて、 それっぽいよ。やっぱり英語は必須?」 「うん。外国籍の従業員も多いしね」 「かっこいいね。やっぱり王子様だ」 「中学の時のあだ名だけど、意味不明」 「そう?川瀬にぴったりだと思うけど」 「何か、祭り上げられてる感じ」 「僕なんかあだ名ないよ。それよりいい じゃない」 「大学の時にできた初めての彼氏って、 どんな奴?」 ドライヤーを止め、岸野に渡しながら 気になることを聞いてみた。 「大学の同級生。ちょっと川瀬に似てた」 「もし岸野と同じ大学だったら、酒に纏わる 出来事が大事にならずに済んだのかも」 「そうだね。中学卒業の時に連絡先を訊いて たら、同じ大学を受けたかも知れないしね」 それにそこで出逢えてたらアプローチしたよ きっとねと、岸野は言葉を続けた。 「川瀬、熱くない?ドライヤー」 「大丈夫。ありがとう」 「ねえ」 「ん?」 「せっかく、僕たち恋人になれた訳だし、 改めて、その、セッ」 「いいよ、しよう」 今度は僕が岸野の言葉を遮り、微笑んだ。 岸野のドライヤーを握る手を掴み、 サイドチェストにドライヤーを置いた僕は、 顔を傾け、岸野の唇を何度も啄んだ。 しがみついてきた岸野を受け止めると、 岸野がふうと小さく息を漏らした。 「かわいいな」 岸野の右頬を指先でゆっくり撫でながら、 岸野の形のいい肉厚の唇を吸い上げる。 やがて舌で岸野の口の中をこじ開け、 歯列を確かめるように舌で撫で回した。 そして岸野と深いキスをしながら、 空いている手で岸野のアレを扱き始めた。 「んんっ」 腰が浮き、身体が跳ねる岸野を押し倒し、 馬乗りになりながら 扱くのを止めずにいたら、 岸野は僕から唇を離し、 吐息混じりの声を上げた。 「ああっ!川瀬‥‥っ!」 先端から透明な液体が溢れて、止まらない。 初めて他人のを扱いているが、 気持ちよさそうにヨガっている岸野が 愛おしくて、もっと鳴かせたいと思った。 ベッドの端に転がっていたローションの瓶を 手にすると、片手で蓋を押し開けた。 岸野に足を開かせ、 大切な部分が丸見えになったところで、 岸野のアレを扱き続けながら 自分の反対の手指にローションを垂らした。 「こっちでも鳴けよ」 そう言って、 岸野の大切な部分に指を差し入れた。 「ああんっ」 岸野の口から喘ぎが漏れたところで、 挿れる指先を徐々に増やし掻き回していく。 「川瀬っ‥‥!川瀬っ‥‥!」 はあはあと荒い息を吐きながら、 のけ反り悶える岸野を見て、 自分のアレもそそり立った。 「イ、イクっ!イッちゃう!んああっ、 川瀬、大好きっ!ああん!ん゛んっ」 叫びに似た声を上げ、僕の腕に手を添えた 岸野は、次の瞬間、勢いよく射精した。 自分の首にまで派手に精液を飛ばし、 息も絶え絶えになった岸野の大切な部分から 指を抜くと、 もう僕のが入りそうなくらいぽっかりと 口を開けていた。 「岸野、挿れてもいい?」 避妊具をつけ、岸野の返事を待ったが、 岸野は息を整えるのに精一杯のようだった。 避妊具をつけた自分のモノにもローションを 垂らし、返事を待たずにあてがった。 「挿れるよ?」 岸野の大切な部分は入口こそ窮屈だったが、 その先はすんなり受け入れてくれた。 「ああああああっ」 岸野の中に全部挿れた時、 岸野が僕にしがみつきながら、 切ない声を出した。 「何、気持ちいいの?」 たぶん、僕のモノは人より長いらしいから、 かなり腹の奥まで入っているのだろう。 馴染むまで動かさずにいたが、 岸野の中があまりにも温かくて、 身体の芯が疼いた。 「また出ちゃいそう‥‥川瀬のが大きくて」 「僕も岸野の中が気持ちよくて、ヤバい」 動かすよと言って、 ゆっくり腰をグラインドさせると、 岸野はあられもない声を上げ始めた。 「気持ち、いいよぉっ!ああああんっ!」 その声を時折キスで塞ぎながら、 僕は岸野を文字通り何度も抱き潰した。 果てては避妊具をつけ、また果てて、 岸野は岸野で、ドライと呼ばれるイキ方で 際限なくイキ続けていた。 僕たちは明け方まで抱き合い精を放出した。 9時40分。 セットしていたアラームの音で目が覚めた。 チェックアウトの時刻は、もう間もなくだ。 ベッドから起き上がり、慌しく支度をした。 「忘れ物はない?大丈夫?」 ドアを開け放つ前に岸野に声をかけると、 岸野はうん大丈夫と頷いた。 ホテルを出て街の雑踏に紛れ込みながら、 僕は岸野とそっと手を繋いだ。 数時間前までは、ただの元同級生だった。 改めて運命の巡り合わせを感じ、 岸野と見つめ合う。 「川瀬、何を考えてるの」 「次に岸野と会うのはいつかなって」 「どうしようか。来週末、空いてる?」 「ああ、大丈夫。会おう」 酒の弱さがきっかけで、恋人ができた。 もう二度と口にはしたくないし、 恋人のためにも口にするつもりはないが、 こんな出逢いを引き起こしてくれるなら、 大歓迎というものだ。 さて来週末、岸野とどう過ごそうかな。
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