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――2016年夏
「まもなく、終点東京です――」
新幹線内に、アナウンスがかかる。
私は、スマホのインカメで、前髪が崩れていないか入念に確認しながら、新幹線が停車するのを待った。
東京に来るのは、中学時代の修学旅行以来だ。
ひとりで来るのは、もちろん初めてで、昨日は緊張のあまり全然寝られなかった。
何度も、乗換案内でルート検索をしたし、駅の構内案内図を調べて乗り場を探したりもした。
新幹線の窓の外に、駅のホームが見える。
スーツを着た人や、大きな荷物を持った人でごった返している。
今から、あの中に身を投じるのかと思うと、心臓がバクバクと早鐘を打ち始める。
新幹線を降りる人の群れが途切れるのを待っていたら、結局最後まで降りられなかった。
皆が下りた後、私も急いで駅のホームに降り立つ。
次はJRに乗らないといけない。
乗り場は――私は周りを見回す。
人が多くて、背の低い私には周りを見るのが一苦労だ。
同じ方向に向かうサラリーマン風の背格好の男の人の後ろをついて行くと、思いのほか楽に目的地まで辿りつけた。
JRで、聖が通う大学の最寄り駅である御茶ノ水駅へ向かった。
今、私がひとりで電車を乗り継いで、東京にいるのは不思議な気分だった。
「東京駅着いたよ」
新幹線の中で聖に送ったメッセージには、まだ既読がついていない。
まだ講義受けてるのかな、なんて思いながら、電車の外に目を向けた。
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