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訃報
実家の母から久しぶりに連絡が来た。
たまに電話する程度だけど、その日は珍しく仕事でへとへとの平日の夜。
明日も仕事なんだよなーと憂鬱になっていると、スマホが突然鳴った。
誰なんだろう、もう夜遅いのにと苛立ちながらも無視するのはなんか後味悪いよねと一応応対する。
画面を見ずにさっさと出たら、悲壮感漂う母の声が耳に入った。
「千晴、ごめん。仕事忙しい?」
「あれ、お母さん? 珍しいね、こんな時間にかけるなんて」
母は基本、夜遅くに電話をかけるような非常識な人ではない。
いつもは相手を考慮して電話をかける時は失礼にならない時間帯を狙う。
そんな母がそろそろ私が寝ようとしている時間にかけるなんて、よほど何かがあったのだろうと私は思った。
「実は、昔仲良くしていたあっこちゃんいたじゃない。見つかったんだって……」
「あっこちゃん!?」
幼なじみの報告に私は驚く。
中学の途中まで仲良くしていた彼女の名前が出るなんて予想しなかった。
ある時を境にあっこは姿を消した。
ネバーランドに行くと言い出して、やばいやつらと一緒にいると決めたのだ。
「あっこちゃん、どんな様子なの?」
と尋ねたら母はこう答える。
「……千晴、今度の土日仕事とか都合悪くなかったら出てってくれる? 喪服とかの用意はあんたのところで一緒にやりましょう。場所は……」
とはっきりとは答えなかったが、言いにくいのか具体的な話を始めた。
ある程度頭の良い人だから遠回りなことを言うけれど、特定のワードを言ってきたからすぐにわかった。
人生初の喪服を着る経験が身内じゃなくて、幼なじみになるなんて奇妙な人生だなと思う。
初めて死に触れあうのだ。
なんともいえない胸くそさで、その日はレムとノンレム睡眠の行き来が激しかった。
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