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『……私、日向直です』   知ってたよ。僕はずっと君を探していたのだから。あの日、深く関わるつもりなんてなかったんだ。 『キスやセックスしなきゃ愛とよべないなら、私は愛なんかいらない。そんなもの欲しくない』   僕だって、ずっとそう思ってた。何度も会いにくる君を突きはなしたのは、僕たちがお互いに別々の時間を生きていると思ったからなんだよ。 『みんなが『それはほんとの愛の形じゃない』っていったとしても。たとえ納得しなくても。認めてくれなくてもいい』 『君はなにもわかってない。もう、ここへくるな』  あのとき、そういって悔やんだ。僕には君のまっすぐさが、まぶしすぎたんだ。素直すぎて、見ていて心配で怖かったんだ。 『真は、私のことが好きじゃない? それとも、好きになってくれる。どっち?』   でもいつのまにか僕は、君に惹かれてどうしようもなく愛おしくてたまらなくなった。どれほど僕が思いを隠しても、君が僕の目の奥をのぞきこんでくるから。瞳の奥に隠した思いをのぞきこんでくるから。    君は、僕自身を映す鏡で、暗闇の中の僕を照らす光になった。 『パートナーになってください。私は、真のことが好きです』 『好きだよ。君に、出会えてよかったよ』  このままずっと。   ひとりでいいと本気で思ってた。   あの日、あのとき、君に手を差しのべた僕は傲慢だった。  救われたかったのは、僕のほうだったんだ。  〈了〉
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