特権校則

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そして、今の生徒会長は「生徒会長へのプレゼント禁止」という校則を制定した。 今でもよく覚えている。生徒会の引き継ぎ式兼就任式でこの新校則が発表されたとき、生徒達は騒めいた。それはそうだ、こんな校則になるのなら、滝本先輩に投票なんてしなかったはずだ。 特権校則のおかげかどうかはわからないけど、生徒会長に立候補する人は毎年複数名いるらしく、その場合は全校生徒による投票で会長が決まる。 滝本先輩はこの高校の王子様だった。 ……というのは、もちろん比喩なんだけど。 すらっとして背が高く、アイドル顔負けの美しさで、それでいて紳士的。勉強もスポーツもできて、まるで少女漫画の中から出てきたような人だった。 一つ上の学年なのに、入学してすぐにその名と顔を知るようになるくらいの有名人だ。 生徒会長となれば、いろいろな場面で前に出て挨拶することも増えるので、それを期待してたくさんの人が滝本先輩に投票したのだ。結果は圧勝すぎて、残りの候補者が可哀想なくらいだった。 ちなみに、生徒会長の候補者はエントリーの締切までは公表されない。しかもエントリーしたら辞退はできなくて、更には当選しなくても必ず生徒会の他の役員にならないといけないという決まりがある。「特権が手に入らないならやらない」ということがないように、エントリー前にこの点は念入りに確認される。 他の候補者は、相手が滝本先輩になると知っていたらエントリーしなかったんじゃないかなと思う。 だって、どう考えても勝ち目がない。先輩の人気は本当にすごいのだ。 しかし、滝本先輩がエントリーするなんて誰も予想していなかった。穏やかで、望んで人前に出ていくタイプではない。そんなことしなくても、先輩の周りには自然と人が集まるんだから。 それまで、滝本先輩の下駄箱が手紙やプレゼントで埋まっていることもしょっちゅうのことだった。 いつも優しく微笑んでいたけど、本当は困っていたのだなと、特権校則が発表されて初めてわかった。
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