【言の葉の欠片《2》】

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【眠り姫】 私は小学校へ行くまでは幼稚園のお友達に、よく『眠り姫』と呼ばれていた。 もう遠い記憶で薄らとしか覚えていないが、私は何時も、登園中に寄り道をして、草花の生えた原っぱで……太陽の光に寄って暖められた原っぱで……居眠りをしては、お母さんが駆け付けてきて、叱られて、眠い目を擦りながらヨタヨタと登園していたのを覚えている。 今の時代では考えられないであろうが、私の頃の時代では、皆んな、自力で歩いて登園していた。 保護者同伴でなければならなくなったのは、何時の時代からなのだろう? 私の時代では保護者同伴なんていうシステムなんか無かった。 父親は仕事へ行き、母親は家で家事をする事が当たり前だった頃の時代。 『普通』と呼ばれる幼稚園のお友達は皆んな、真っ直ぐに歩いて登園していた。 けれど私は、どれだけ叱られても原っぱで居眠りをする事が習慣になってしまっていた。 園長先生が心配して私の母親に助言をして、私は、母親に連れられて大きな施設で何かの検査をしたような気がするが、その事はあまりよく覚えていない。 つまりだ。 私は大昔から、何処かイカレていた訳だ。 あの頃。 もっと精神科医療とやらが現代みたいに発達していたら、私はどうなっていただろう? それにしても。 あの原っぱの上で居眠りしていた私は、嘸かし幸せだったのだろうな? 今一度『眠り姫』になってみたいものだ。 (2022年11月26日)
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