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第16話 価値観の違い
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「莉亜ーーー!」
土曜日の夜十一時、一人で部屋にいると、遠くから自分の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
それと同時に足音が少しずつ近づいてくる。
「莉亜!」
再び私の名前を呼んで、部屋の扉をノックもせずに入ってきたのは、隣の部屋に住む新浜佳南。
いつも明るく元気な女子大生。
「……どうしたの?」
私がこのアパートに引っ越してきてから約二ヵ月が経った。
突然何かが始まるこの流れもいい加減慣れてきたけれど、最初のリアクションだけはうまくできそうにない。
「明日、空いてるよね?」
「うん。明日はお休み。何かする――」
「やったー! じゃ、明日よろしくね!」
何かするのと聞き終わる前に、それだけ言ってカナンは私の視界から消えた。
カナンは自分のセリフすら最後まで言い切らずにいなくなっちゃった。
明日は日曜日だから、仕事は休みだし特に予定もない。
そんなことは聞かなくてもカナンはわかっていると思うけれど、何も言われてないのに最初から頭数に数えられていることはよくあって、それを思えば前日の告知はありがたいものだ。
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