2019年9月

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

2019年9月

 2019年9月2日(月)  神奈川県夕凪市の医者、賀来誠(かくまこと)は病院経営のかたわら、医学生の教育にもあたっていた。そのためには解剖用の死体が必要だが、誠はギャンブル中毒で競馬やパチンコ、宝くじなどに金を注ぎ込み経営難だった。誠は快楽殺人犯の杉田那央人(すぎたなおと)から闇で死体を買っていた。杉田は悪名高い小林一生(こばやしいっせい)とペアの仲間だった男で、墓から死体を掘り出していたが、誠はそのことには目をつぶっていた。  誠はこの日の夜、京極夏彦の『ヒトごろし』を読み終えた。  2019年9月16日(月)    明け方、院長室で誉田哲也(ほんだてつや)の『キュロスの女』を読んでいると急患が入った。  手術のために若い女性の死体が必要になり、杉田に頼む。杉田は少女の死体を持ってきた。それを見て誠の助手、相武千春(あいぶちはる)は驚く。その少女は夕凪駅前でストリートミュージシャンをしている少女で、千春は昨晩コインを恵んだばかりだったのだ。 「あなたには人の心がないんですか!?」  千春が涙を流しながら叫んだ。  誠は最初、千春は杉田に行っているのだと勘違いしていた。千春が杉田の方を見ていたからだ。 「杉田よ、いくらなんでもハンマーで殴ることはねーだろ? 首を絞めて殺した方が彼女だって苦しまなかったろうに」  誠から杉田が殺人を犯していたことを聞かされ、千春は動揺するが、隠蔽を決める。その話を盗み聞きした杉田の派遣仲間の尾上淳悟(おのえじゅんご)が杉田を脅迫する。  尾上と杉田はホルモン工場に派遣されていた。ハチノスっていう牛の胃袋をタワシで洗ったりする仕事だ。 「10万よこせば見逃してやるよ」  杉田は院長室から出て、トイレに行こうとしてるところを尾上に捕まった。  杉田の心臓は早鐘を打っていた。 「杉田さんも40近いんだろう? このご時世、転職活動も大変だぞ?」  尾上は豚みたいに太っていた。35歳には見えない。どこからどう見ても55歳だ。  しかし、17日の夜、工場近くの廃墟で尾上は杉田にハンマーで撲殺される。 「こんなところを待ち合わせにしたお前が悪いんだ」  杉田は、鉄で出来た床で白目を剥いている尾上に話しかけた。  それを知った誠は翌々日、誠は院長室で杉田をロープで絞め殺す。杉田はソファに座っていた。黄昏の光が窓から注ぎ込んでいる。  誠は散々悪いことをしたことで魔力を使えるようになっていた。透明になる魔法を使い、誠は顔を見られることなく杉田を葬ることに成功した。    9月23日(月)  誠は夕凪駅近くの図書館でハードボイルド作家、大沢在昌(おおさわありまさ)の『黄龍の耳』を借りて読んだ。  昨夜は千春と夕凪駅近くのバーで酒を飲んだ。  千春は飲めない体質らしくノンアルコールビールを飲もうとしたが、誠は「そんなものは酒じゃない。いいからビール頼めよ」とアルハラをした。  千春は昨夜のニュースであの少女が、秋田幾重(あきたいくえ)って17歳の娘だと知った。  杉田が死んだことはまだ明るみになっておらず、千春は知らなかった。  断ったら何をされるか分からないから千春はビールを飲んだ。頭がクラクラした。  誠はハラスメントをするとヒットポイントが上がる体質だった。Harassment・Point。  誠は風邪を引かない体質になった。    9月30日(日)  誠は、小林に招かれて函館にあるマリス城を訪れた。マリスは英語で恨みを意味する。  小林は函館での土地の購入を希望していた。しかし、小林の正体は伝説上の存在とされていた吸血鬼であり、誠は下僕にされてしまう。小林は誠に手引きさせて船を占拠してロシアに渡り、誠は「精神を病んだ」としてモスクワ精神病院に搬送される。コテージを棲家とすると、高貴な人間として社交界に現れ、コテージの隣に居住する宇喜多(うきた)博士一家に接触する。宇喜多の娘、恵梨香(えりか)の友人、織江(おりえ)は小林の虜になり、血を吸われて死んでしまう。  
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!