風花雪月

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 サナトリウム  柔らかい日差しが差し込み、穏やかな風が吹く中庭。  平和の象徴であるかのような時間がゆっくりと過ぎていく中、十数人の人達が定まらない視点で空や周りの景色を凝視している。  理解不能な事をひたすら喋りながら、中庭を自由気ままに間の抜けたような笑みを浮かべながら歩き続ける男。  女もいるな……。  こいつらにとっては、ここは楽園なのだろう。  私にとってもそうでなくてはいけない。  ここにいる連中が響かせるのは、神経をズタズタに切り裂こうとする、忌々しい不協和音とずれまくっているリズム音だけしかない。  私の苛立ちを悪化させる要素以外ないではないか。  私は精神衛生の観点から奴らに、再三注意をしてきたのだが、全く言うことを聞いてくれない連中ばかりだった。  人に迷惑をかけてはいけないと言うことを全く知らないとは、とんでもない連中だ。  私は白衣を着た偉い人達にも訴えたのだが、訴えは見事にスルーされている。  私のことなどどうでもいいのだろう。  正しくてもマイノリティーの意見はゴミのように見捨てられてしまうと言うことだ。  諦めて一人、ベンチに座り、一人だけの納得のいくことのない、無駄としか思えない時間を過ごすしかないのだ。  見捨てられた場所はただ荒涼とし、疲れ果てていくだけでなく、蠢く暗闇を確実に作り出し、この世に存在することのない化物を創り上げていく場となる。  見え透いた小さい嘘の中では、途方もない悪意が育て上げられていく。  多くの人々は決して脱出することのできない迷路を彷徨なければならない、くだらなすぎる生き物であり、イデオロギーの底辺で生き続け、汚物に塗れ続けるミジンコ未満の存在でしかないのだ。  果てる事を忘れ去った燻り続ける想いは、生き延びる事ですら不可能な蟻地獄のような牢獄の中で、ゆっくりと流れる時間の経過が創り上げる、余りにも悪質な情報と共に蓄積していき、火山の噴火の如く爆発する瞬間を狙っている。 「あーーー……」  降り積もるは今日も雪。
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