prologue

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 12月24日、クリスマスイブ。 街は色鮮やかな電飾で彩られ、沢山の人が楽しそうに行き交う。駅前のシンボルツリーの上には薄っすらと雪が積もっており、その一つ一つにネオンが反射してキラキラと輝く。  ……寒。  肌を突き刺す冷気にそう悪態をつきながら、「はー」と息を吐くとそこだけ空気が白く染まった。歩くたびに地面に積もった雪がジャリ、ジャリ、と音を立てるのも何だか一層寒さを際立てている。思わず身震いをすると、右手に抱えている小さな花束が揺れた。傍目から見ればきっと恋人へのプレゼントにでも見えているであろうそれは、全然ロマンティックな物ではなくて。むしろ否が応でも「あの頃」へと記憶が引き戻されるトリガーのようなものだった。ジワジワと侵食してくる記憶の断片が突き刺さり、見えない痛みを伴う。  もう5年経つのに、情けな……。  みるみると体温を失っていく指先と、歩みを進めるたびにズキズキと脈打ちを強める痛みに、思わず自嘲するかのように「はは」と乾いた笑いを漏らした。でもすぐにそれは引っ込んで、何処からともなく苦い感情が込み上げる。握っていた花束の包装がグシャリと音を立てて歪むのが聞こえ、唇を固く結んだ。まるで嗚咽を堪えるかのように静かに、強く。 そして、白く降りそそぐ雪の中へと隠すかのように、小さく涙を零した。
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