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「ねえ、今回の魔法薬の仕上がりはどうかしら?」 「多少濁りはありますが、適正範囲ではないでしょうか」  私の質問に、ノアが魔法薬の入った瓶を光に透かしながらにこりと笑った。ひーん、厳しい! 「結構頑張ったのに、まだこれでもイマイチなの?」 「一般用としては問題ないですよ。むしろわたしが作ると高ランク過ぎる魔法薬が出来上がってしまうので、ルイーズ姫くらいのルーズな作り方でちょうど良いとも言えます。辺境の村で最高級品を安売りするのもあまりよろしくないので」 「全然フォローになっていない上、私の名前に対して不敬過ぎでは?」  まあ確かに、元宮廷魔道士のノアが最高級品を露店で投げ売りしたら、近隣の薬屋さんたちが軒並み閉店する羽目になるだろうけれど。他に買い物先のない田舎で村八分とか、想像したくない。 「はいはい、愚痴はそれまでにしておいてくださいね。明日の朝市に備えて、今日は早めに休みますよ。晩御飯の準備にとりかかりますので、ルイーズさまは今の間にお風呂の準備をお願いします」 「そこは一緒に夕食の準備じゃないの?」 「魔法薬作成で結構時間を食いましたので、今日は料理のお手伝いをさせてあげる時間がありません」 「完全に戦力外の子ども扱い」 「ほらほら、時間を無駄にしないで」 「ノアは、私のお母さんか!」  魔法薬と同様に料理上手なノアに急かされ、私は慌ててお風呂場に向かった。第一王女の辺境生活は、本日も和やかなものである。
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