憎悪の形

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「え?」不穏な空気を察知した大木は、左門寺のその顔を見つめた。 「たしかに君は、一連の殺人事件の容疑者からは外れました。ですが、春日井天利さんに付き纏っていたことに変わりはない。その証拠については君の家からたくさん出てきている。ここからの取り調べはそのことに関するものですよ」 その時のニヤリと笑った左門寺の顔は、まるで大木のことを見下し、蔑んでいるかのように見えた。左門寺は内心、ストーカーなんてチャチで何も面白くない犯罪を犯すなんて極めて美しくない。左門寺はまじまじと大木を見つめて、「君が犯したその罪は、汚物に等しい。その罪は、君のその人生を懸けて償え」と語りかけるように話した。左門寺はその言葉を残し、取調室を出た。外の廊下には、菊村と薫が立って待っていて、その少し離れたところに幸守が立っている。左門寺は二人に「ここからの取り調べはそっちに任せますよ」と言って、少し離れたところに立つ幸守のところへ歩いていったのだが、彼はあることを思い出し、振り返り、「それと______」と言い始めて、「二人に会わせたい人がいるんだよ。時間が空いたら、僕たちのところに来てくれないか?」と聞き、菊村の「あぁわかった」という答えを聞くと、すぐに幸守と共に中央署を後にした。 「じゃあ、あの大木進って男は、ただのストーカーだったってことか?」と、幸守がその道中に左門寺に問いかけると、彼は「あぁ。汚らわしい犯罪者だ」と切り捨てるかのように言った。 「随分な言い方だな。俺からすれば、殺人鬼だって汚らわしい犯罪者だぞ」 「いつ僕が殺人鬼が汚らわしくないなんて言った?もちろん、殺人鬼だって汚らわしいよ。それに、最も憎むべき生き物だ」
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