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「あ、そうだ。なぁ知希、どの指にする?」
「え…っと…。どうする?」
目を見合わせて、2人して黙った。
たぶん、恋人同士のペアリングの定番は右手の薬指、なんだろうと思うけど…。
「…人差し指とか、どう?左の」
両手を胸の前に出して考えていたオレの左の人差し指を、桐人の長い指がツンとつついた。
「いい、と思う」
人差し指、中指あたりがハードル低め、な気がする。
薬指は、まだちょっと照れくさい。
まあ結構べたべたくっついてるから今更、なんだけど。
「じゃ、そうしようか。知希はどんなのがいい?」
目の前にズラッと並んでるリングを見ながら桐人が訊いてくる。
「…指輪なんてしたことねぇもん。分かんない…けど」
桐人の大きな手には、ゴツい指輪が似合いそうだ。
ディスプレイケースの中から、蔦が絡まってるみたいなデザインのゴツめのやつを選んで「これは?」って桐人に訊いてみた。
「お、いいな。あ、でも知希にはもう少し細いのが似合いそうな気がする」
これとか、と割と細めの、ダイヤモンドの表面みたいなカットの指輪を指差した。
お互いに、相手に似合いそうなのを選んでる。
つい、くすって笑ったら桐人もおんなじように笑った。
たぶん同じこと考えてた。
おんなじ、うれしい
「じゃあさ、太すぎず細すぎないのにしようか」
桐人がそう言いながら、さりげなくオレの手に触れた。その長い指に指を絡める。コートがそれを隠してくれるから、寒いの苦手だけど冬が好きになった。
なかなか「これ!」っていうのを決められなくて、桐人が調べてくれてたショップを順番に回った。
「あ、ねぇ桐人」
何軒目かに入ったのは、BGMが控えめなちょっとだけ大人な店だった。オレ1人では絶対入らない、ていうか入れないオシャレな店。
ガラス製の棚板のスタイリッシュなディスプレイ。
キレイに並んだ色々なデザインの指輪たち。その中の一つ。
銀色の、真ん中に黒のラインが入ってるリング。
「これ、よくね?」
「ああ、うん。いいな」
そう言った桐人がちらっと値札を見た。
大丈夫?って思って見上げたら、うん、て頷いてオレの背中をぽん、と叩いた。
幸いサイズが揃ってて、お互いピッタリのものがあった。
「お、似合う似合う」
「うん、いい」
試着の段階で既に顔がにやけてくる。
うれしい、うれしい
指輪を外して桐人に渡すと、桐人がスッとオレの方に長身を屈めた。
「お前、今日可愛すぎてどっか隠しときたいぐらいなんだけど」
「え…」
思わず桐人を凝視した。顔が熱くなってくる。
くすっと笑った桐人が「ちょっと待っててな」と言って会計に向かった。
その背中を見送る。
スタイルのいい後ろ姿。
カッコいい。
兄になりかけた、オレの恋人。
にやにやがバレないように、拳で口元を隠した。
「お待たせ、知希。行こうか」
「うん、腹へったー」
へへっと笑いかけながら、桐人の横にぴたっとくっついて歩く。
ショップを回ってる間に、とっくにお昼は過ぎていた。
「そこ入ろっか」
ちょっとレトロなレストラン。前にも1回連れて来てもらった。
「ここ美味いよね」
少し街から外れてて、時間も遅めだったから席は空いていた。
通されたのは壁際の席。ここの店は席と席の間の仕切りが高くて、半個室っぽくなってるからあんまり人目を気にしなくていい。
そこもお気に入りポイントだ。
クリスマス限定パスタランチを頼んで、ふうっと息をついた。
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