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君の存在は、酷くて甘くて遠い①
特に、努力しなくてもなんでも出来た自分が、唯一夢中になってやっていたことも止め、毎日が退屈でたまたま受けた大学も一年が過ぎ二年目のある日、馴染みのクラブで此処にはいないタイプのスタッフ兼DJが気になった。俺は、側にいた店長の宇多川に聞いた。
「ああ、瀬織 実留くん? 新人なんだけどあっとゆー間に人気になっちゃって…確か悠と同い年じゃなかったかな」
「へぇ……そうなんすか」
確かに音楽センスがいいし、同年代と聞いたら声掛けたくなった。
俺は、友人達とテーブル席に座った。オーダーを取りに来た瀬織に「さっきのオリジナル? めっちゃ良かったよ」と声を掛けた。
「ああ、どうも。で、オーダー何なんですか?」
「え? あっジンジャーエール3つで」
「他には?」
「えっと……以上で」
「……失礼します」
瀬織は、事務的にオーダーを聞いて去って行った。
え……
大概、俺が声掛けたら好意的なのに……なんだあいつ。つーか逆に新鮮なんだけど……
で、そんな事があった数日後、黒髪癖っ毛の黒縁メガネ掛けた瀬織 実留を大学で見かけた。クラブで会った時と雰囲気が違うし全然気が付かなかった。
なんだよ同じ大学かよ……!
驚いたと共に俺と瀬織は、全くもって接点もなければ一生関わらないだろうなと、どう声を掛けていいか分からず瀬織を遠くから眺めていた。
ああ……
大学の中庭でベンチに瀬織が耳にイヤホンをして音楽聴いてるのを見かけた俺は、隣のベンチに座った。
こんなに近いのは初めてだ……
瀬織のいる方から甘い匂いか漂ってくる。いつも食べてるグミの甘い匂いだ。今日は……
「……ピーチ?」
あっやべっ!
「え? 悠なんか言った? 」
そうだ芽依のこと忘れてた……
「……いや、なんでもない」
「ふ〜ん、で、今日どこ行く?」
清楚系で可愛いと雄大(友人)に聞いたけど、噂では目立つ自分の好みのやつに声かけまくっていると、聞いたよく喋る田中 芽衣は、俺の今カノ。告られて付き合ったが、この調子じゃ長くない。また、雄大達に言われそう……
隣の芽衣よりも隣のベンチに座っている瀬織の方へ意識がいってしまう。
俺は、瀬織から意識を逸らそうと、中庭をウロウロするブチ猫を目で追った。そのブチ猫は、俺の目の前を通り瀬織の方へ歩いて行く。瀬織は、慣れた手付きで猫を撫でて抱き上げた。
え…笑って…る……
俺は、彼女越しに見た瀬織の笑顔から目が離せなくなった。
「ねぇ、悠聞いてる?」
芽衣の不機嫌な声を聞いて、我に返った俺は立ち上がり歩き出した。
「どうしたの?」
「……帰る」
「え?!」
俺、今なんて思った?
俺にも笑いかけて欲しいなんてヤバくね?!
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