君の存在は、酷くて甘くて遠い②

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君の存在は、酷くて甘くて遠い②

 大学の学食で、学生人気の麻婆丼を目の前になんとなく中庭の方へ目をやった。天気良いお陰で気分も上がりそうってなるかい! 「悠、どうしたんだよその顔」雄大こと佐々木 雄大(ささきゆうだい)は、俺の顔を見て笑った。 「イケヘンがだひなしじゃね?(イケメンが台無しじゃね?)」雄大の隣に座って大盛りカレーを頬張りながら言ったのは大野 真琴(おおのまこと)だ。  真琴、食うか喋るかどっちかにしろや…… 「顔がいいのは仕方ないだろう」俺は、痛む左頬を押さえ麻婆丼を一口食べた。口の中が切れて滲みるし美味しさ半減だ。 「うわ……自分でゆー?」雄大は、鯖定食の鯖を箸で器用に食べていた。  雄大は、和食好き。派手な顔に似合わねぇ…… 「そーゆー意味じゃねーよ。つーか何処が清楚で可愛いだ? ビンタするは蹴るはで大変だったんだからな!」 「悠、蹴られたの? やべぇウケる」雄大、爆笑。 「何やらかしたんだよ」真琴は、冷ややかな目で俺を見る。 「・・・別に、帰るつっただけだし」俺は、芽衣の話しをほぼ聞いてなかったってのは言わなかっが…… 「どうせあれだろ? 上の空で話し聞いてなかったんじゃね?」と真琴がズバッといい当ててくる。 「……聞いてた…よ…」の後の言葉を俺は、口籠ってしまった。 「ああ、悠そーゆーとこあるある。彼女の話ちゃんと聞いてやらねーと」雄大は、スマホの画面を高速タップしていた。 「雄大みたいにできねー」 「それは、同感。雄大ってマメなん彼女だけじゃねーもん」真琴は、大盛りカレーを平らげ合掌する。 「そっか? 普通じゃね? つーか大学終わって暇なら遊び行こうぜ」雄大も、鯖定食を綺麗に食べて合掌した。 「いいね……」と真琴。 「俺は、パス」俺は、スマホのスケジュールを確認した。 「ええ! なんで?」と雄大。 「バイトあんだよ」 「その顔でバイトすんの?」真琴が笑った。 「仕方ねーし…今日なんか休めねーみたいだし」 「そっか、なら俺らで行くか」雄大は、真琴にニッコリ微笑んだ。 「うん、いくいく〜〜」真琴は、スマホを見ながら頷く。この二人、相当遊んでんのにさ……なんで俺だけこんな目に遭うんだよ!  雄大と真琴は、二人して用があると言って一人学食に置いていかれた俺は、食べかけの麻婆丼をなんとか平らげた。そして、なんとなく辺りを見ると瀬織がいつものメンバーと食事中だ。  俺の顔がいいって相手がそう言ってるだけで…… 瀬織は、友人達と会話で盛り上がっているのを俺はただ見てるだけ。どう声かけていいか分からない、知ってるのは俺だけで、幾ら顔が良くてもどうでもいい奴らに好かれたって意味がない。 ____え? 急に立ち上がったせいで椅子が倒れた。俺は、倒れた椅子を起こし、食器を返却して学食を出た。  俺、今なんて……? 好かれたいとか…… いやいやいや! 好かれたいってなんだよ!  ああ、マジで色々、ひでぇーわ……俺……
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