「サンタなんかいないけど」

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「サンタなんかいないけど」

この世にサンタクロースはいないし、神様もいない。 それはもうとっくの昔から知っていたことだけれど、まあやっぱそうなんだよなあ、って改めて思った。 一樹が、クリスマス前のこの時期にできた彼女に、出来れば良いプレゼントを買ってやりたいと言い出してバイトをはじめた。 そのせいで俺は放課後がちょっと退屈になったのと、待ち望んでいたこの冬休みの予定もなくなってしまった。 その上、例の一樹の彼女をゲーセンデ見かけた。 それだけだったならば何も問題はないのだけれど、知らない男と腕を組んで歩いてる始末だ。 やっぱり世の中にはサンタも神様もいないし、夢も希望もねえんだなあ、って感じだった。 「どうする?」 「どうするったって…」 「一樹に言う?」 「でも、バイト頑張ってんだろうし」 一緒にいた友人のうちの一人が、俺の服の裾をひっぱって「だよね?」と確認を求めて来たので、「そう」とだけ、至極簡潔に答える。 あの短すぎるスカートからのびた長い脚も、黒い艶やかな髪を左右で二つ結びにしているところも。 俺が何度か、一樹と手を繋いで帰り道を歩く姿を見送ったことがある、まさにその女そのものでしかなかった。 そんな俺の軽い返事に、他の友人たちはわざとらしく物影に隠れると「あーあ」なんて、声をそろえて肩を落とした。
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