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「まずシュトラント公爵の爵位は継続とし、新たに南部公領の半分を分け与える」
ーー半分も!?
ヴィオラが驚くのも無理はなく。
豊かな南部の、それも広大な公領の、半分を貰い受けるなど……
貴族最大の権力を得るも同然だからだ。
となるとシュトラント家は、離婚や悪妃の悪影響を微塵も受けないどころか、むしろかなりの安泰で。
汚名を挽回する必要も、ヴィオラが責任を取らされる事も、あるはずがないのだった。
「もちろんお前への慰謝料も、今の生活を生涯維持出来るほど用意する」
「っ、そんなもの要りません!」
堪らず反論するヴィオラ。
身の上を案じていたわけではないのもそうだが……
ーー私はただ、サイフォス様の側に居たいだけなのにっ……
それ以外は何も要らないのに!
そう強く、今にも口から出そうなほど強く思ったからだ。
にもかかわらず……
「離婚を切り出したのは俺だ。
俺の気が済まないから、全て受け取ってもらう」
すぐさま、そう切り返されてしまう。
そしてそもそも、こうなってしまっては……
散々傷付けた自分には、もう側に居たいと言える資格すらないのだと。
本来の形で幸せになろうとしている2人を、これ以上邪魔するわけにはいかないと。
さらには気が済まないといった理由で、それほどの恩恵を与えられる事から……
気持ちを伝えてしまえば、優しいサイフォスはもっと罪悪感を感じてしまうだろうと思い。
再び込み上げて来た涙と一緒に、その強い思いも、ぐっとぐうっと抑え込むヴィオラ。
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