後悔

8/9
51人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
 それでもなお、承諾出来ずにいると…… 「……それと、早急に離婚に応じるのなら。 ラピズにも同額の慰謝料と、特別に伯爵位も与えてやる」  そうありえない交換条件を持ち掛けられて、ヴィオラは耳を疑った。  王族に暗殺を企てれば、当然処刑は免れないが…… それは隠蔽したとしても。 王族を欺いて王宮に潜入したり、裏切っているも同然の状況だけでも、充分処刑案件だというのに。 2人して何のお咎めもないどころか、さらなる恩恵を与えられるなど…… どう考えても不合理だからだ。  するとサイフォスから、その理由が告げられた。 「本来なら処刑するところだが…… お前たちの仲を引き裂いて、先に奪ったのは俺だからな。 その侘びだ。 なにより、気持ちが冷めた今となっては、お前たちの事などどうでもいい。 地位や財産で、早くケリをつけたいだけだ。 だからも、さっさと離婚に応じてくれっ」  そう苛立つサイフォスに、ヴィオラの胸はズタズタに八つ裂かれる。 ーーもうサイフォス様の心に、私は微塵もいないのですねっ……  抑え込んでいた涙が、今にも溢れ出しそうになり。 耐えきれずに、じわりと滲んでしまうも。 ーーダメ!お願い収まってっ…… これ以上サイフォス様を困らせたくないっ! そう思って、死に物狂いで押し殺す。  そして…… 早く承諾しなければと、決意を固めるヴィオラ。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!