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それでもなお、承諾出来ずにいると……
「……それと、早急に離婚に応じるのなら。
ラピズにも同額の慰謝料と、特別に伯爵位も与えてやる」
そうありえない交換条件を持ち掛けられて、ヴィオラは耳を疑った。
王族に暗殺を企てれば、当然処刑は免れないが……
それは隠蔽したとしても。
王族を欺いて王宮に潜入したり、裏切っているも同然の状況だけでも、充分処刑案件だというのに。
2人して何のお咎めもないどころか、さらなる恩恵を与えられるなど……
どう考えても不合理だからだ。
するとサイフォスから、その理由が告げられた。
「本来なら処刑するところだが……
お前たちの仲を引き裂いて、先に奪ったのは俺だからな。
その侘びだ。
なにより、気持ちが冷めた今となっては、お前たちの事などどうでもいい。
地位や財産で、早くケリをつけたいだけだ。
だからラピズのためにも、さっさと離婚に応じてくれっ」
そう苛立つサイフォスに、ヴィオラの胸はズタズタに八つ裂かれる。
ーーもうサイフォス様の心に、私は微塵もいないのですねっ……
抑え込んでいた涙が、今にも溢れ出しそうになり。
耐えきれずに、じわりと滲んでしまうも。
ーーダメ!お願い収まってっ……
これ以上サイフォス様を困らせたくないっ!
そう思って、死に物狂いで押し殺す。
そしてサイフォスのために……
早く承諾しなければと、決意を固めるヴィオラ。
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