4.ロイヤルスイートルームの朝

4/4
3538人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
 わたしは重い体を起こして、水を飲みに行った。  冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出して、グラスに注ぐ。  ソファーに腰かけて窓のブラインドを少し上げると、車窓の外は白銀の世界だった。 「綺麗……」  真冬の森。  夜中降っていた雪はもうやんでいた。木々の枝から音もなく雪が落ちる。  やがて、朝日が世界を照らした。  白く輝く朝。  夜は朝になり、朝は夜になる。冬は春になり、夏になり秋になり、また次の冬が来る。  彼と一緒なら、暗い夜も寒い冬も、過ぎていく時間だって愛おしい。 「結菜……?」  寝ぼけているのか、伊織さんが手を伸ばしてベッドの片側を探っている。 「ここにいるわ」  わたしはベッドに戻って、伊織さんのあたたかい腕の中にもぐり込んだ。 * The End *
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!