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興味のある本の名前を挙げながら、魔法書庫を見て回ってたアシュレイが、なにかを思い出したようにふっとほほえんだ。
珍しい表情の変化に、頼まれた本を手渡しながら、ストレートに問いかける。
「どうかされましたか?」
「いや、エレノアが言っていたことを思い出したんだ。おまえが戻ってくると、率先して動いてくれるから助かる、と。よく手伝っているらしいな」
「それは、まぁ」
母の手伝いとは心境はかなり違うのだが、アシュレイの言い方からすると、まったく同じものと思われている気がしてならない。
苦笑いになりながらも、テオバルドは当たり障りのない理由を口にした。
「母もいい年なので」
「俺はそのいい年の母の先輩にあたるわけだが」
「……そうでしたね」
母の先輩で、父の同級生。自分より遥かに長い時間を生きている人。わかっているはずなのに、ふたりでいると、この人の本当の年齢も、この人の生きてきた時間の長さも、不明瞭に感じてしまうことがある。子どもだと思ったことはない、ということとは別の次元の感情で。
自分の願望なのかもしれない。
次はなにを思ったのか、またひとつ苦笑のような笑みを浮かべたアシュレイが、受け取った本をぱらぱらと開いた。
紙面に目を落としたまま、呟くように言う。静かな声だった。
「最近のおまえは、いやに煮詰まった顔をしているな」
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