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「福子!助けて!!」 のどかな午後に響き渡るお義母さんの声、というか悲鳴? 「なに?」 居留守を使いたかったんだけど、同居だとそうもいかずイヤイヤ……という本心を隠しつつ。 「血!血が出た!血!早く、なんとかして!!血が止まらないんだってば」 「は?」 見ると、左手でぎゅっと握りしめてる右手からは、ポタポタと血が滴っている。 「あー、もうっ、何したの?」 私はお義母さんの手を開かせて、傷を確かめた。 「痛いっ、血が止まらないから早くなんとかしてよ」 話を聞くと、キッチンで洗い物してたら缶詰の蓋でサクッと切ったらしい。でも。 「とりあえず、洗った?傷口を洗い流さないと」 「痛いからいや!」 子どもかっ!! 「もう、こっちきて」 嫌がるお義母さんを洗面所に連れて行き、傷口を洗い流す。 その間も、うーとか、痛いとかうるさい。 でもよく見たら、もう血が固まりそうになってた。 「いつ切ったの?もう血は止まりそうだよ」 「さっき。でも福子がいないから探しまわってたんよ。いったっ!」 塞がりかけてたところに水道水、それから消毒液をかける。 ___探し回ってる間になんとかできたんじゃないの? 「これでいいと思うけど。いつまでも痛かったら病院ね」 「血、止まった?」 「止まった、止まった」 女性は血に強いというのは、全員には当てはまらないようだ。 とにかくお義母さんは、血に弱い。 血を見るのがダメなのだ。 娘(つまり夫の妹)が怪我した時も、大きな声で私を探し回ってた。 そのどれも、縫うほどの怪我ではない。 傷テープで終わり。 私は保健室の保健士か。
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