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「じゃー、おばさん。これお願いします」
交換券を渡します。フウ君は屋台の女性と知り合いのようです。同じ村の住人ですからね。
「あいよー、お待たせ! コウちゃん元気になったのかい? 良かったねぇ」
「ありがとーございます」
コウ君はゆるりと頭を下げました。
「あらあら……」
どうやら女性は、コウ君からの返事を期待していたわけではなかったみたいです。意外そうな目でしげしげとコウ君を眺めまわします。それでも大人らしく、なんだか別の子みたいねぇ、などとは口に出さず済ませました。
屋台のすぐ横に、買ってくれた人のために二脚のイスが置かれていて、ふたりはそこに座ってたこ焼きを食べることにしました。
屋台の方は出来立てほやほやのたこ焼きを渡してくれたみたいで、包み紙は熱くて持つのが大変なくらいでした。
「そういや、肩。痛くないの?」
「いたくないけど、うまくうごかない」
……おれのせいでこうなったんだし、仕方ない。密かに胸を痛めながら、フウ君はたこ焼きは自分が持って、コウ君に食べさせてあげることにしました。自分のたこ焼きが冷めてしまうのは諦めて。
手に伝わる熱に眉をしかめながら包み紙を解きますと、その瞬間には熱気が立ち上ります。たこ焼きは一口で食べるには大きすぎて、割箸で半分に割るとさらに凝縮した霞が目に見えます。
「気をつけろよ。すっげー熱いから」
「うん……ほわぁ~、あふ、あつ」
忠告してもらっていてもなお、口の中に入ったたこ焼きの熱さは想像を超えていました。コウ君は目を閉じてちょっと混乱しながら、舌やら口やら必死に動かします。少しでも冷まさないと味わうどころではないと。
「でも……あつあつっておいしい」
「舌、やけどしただろ?」
「べろ? へんなかんじになった。でも、またたべたい」
どうやら病みつきになってしまう美味しさだったみたいです。私達は、やけどしそうに熱々なものをそーちゃんに食べさせたことがなかったから、未知との遭遇って感じだったのかもしれませんね。
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