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(ん……? この鼓動、聞いた事がある気がする……)
そのふとした思考に感応したのか、朧気だった景色が次第に色づき始め、確かな輪郭を私に見せていく。
刹那、止まらなくなった咳。優しく擦られた背中。そうして、見上げたその向こう。
『寒くねぇか? 無理しないで寝ろよ』
ーーこれは夢だ。私を抱く影がその輪郭を露にした、その瞬間。そう直感が告げた。
だって、有り得ない。何で? 何でいきなり隼人が現れたの? 今、私はきっと寂しくてやりきれなくなって、脳が変に動いてるに違いない。
『やだっ……はやとがきてくれたなら、うたわなきゃーーげほっ、』
『勘違いするなって。歌はオマケ、カモフラ。俺はお前の存在があれば、それだけでいいんだ』
それなのに、記憶が懐かしい感覚を認め、払拭出来ないのは何故? 隼人に撫でられながら、時が穏やかに刻まれていく。遠くなった喧騒。
……そうね。これが夢なら、別に見続けていたってーー
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