カフェモカ

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それに入籍だって、私みたいな平凡な女ではなく、ヤツの顔面が好きであの性格に耐えられる積極的な女性としたらいい話だ。 危ない、流されるとこだった。 やっぱり全部あの人のせいじゃない! そう思い直すと、頭の中の脳内紬さんが「チッ」と舌打ちしたのが聞こえた。 終業時間まで何度も時計をチラ見して過ごした私は、終業を告げる鐘とともに会社を後にした。 電車に飛び乗って向かうのはもちろん、あの人のお店。 真っ暗になった街に灯る明かりを、 車窓から眺めながら考える。 まずお店に行って、紬さんを見つけたらビシッと人差し指を突きつけて『貴方の出した婚姻届を無効にする調停を起こしてやる!』と面と向かって言ってやろう。 きっと奴は、いつもカフェに行って本を読んでいる大人しくて逆らわなさそうな女だから私を入籍相手として選んだに違いない。 今まで黙って言うことを聞いていた私が突然牙を向いたら、慌てふためいて私の話を聞くはず。 そうして、私が思い通りにならない面倒な女だと認識したら、ヤツはこの婚姻をもっと都合の良いや自分のファンの女性に持ちかけることになる。
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