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自分の声が壁に反射する。息が乱れるほど大きな声を出してしまったことを、瞬時に後悔した。あれだけ毎日頑張ってきた自分のすべてが、これで音を立てて崩れてしまった気がした。
目の前の高橋さんは、一気に目に涙を浮かべた。ハッとしたときには、彼女はぽろぽろと涙を零して泣き出したのだ。
「そんな……私頑張ってるのに……佐伯さん、怒るなんて思わなかった……」
嗚咽を漏らして泣く彼女の後ろに、運悪く男子社員たちが通りがかった。そして、泣いている高橋さんを見つけるや否や、慌てた様子でこちらに集まってくる。私は数歩、後ろに下がった。
がやがやと集まった人たちは、なんだなんだと高橋さんを囲む。泣いている彼女、怒鳴ってた私。誰がどう見ても、悪者がどちらかなんて明らかだった。
「どうしたの!?」
「大丈夫?」
「佐伯さんを……怒らせちゃ……っ」
「なんかミスしちゃったのかな? 佐伯さん、そんな泣かせるほど厳しくしなくても」
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