招き猫招き猫招き猫猫招き猫

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招き猫招き猫招き猫猫招き猫

 宝くじが当選しやすい店のニュースを読んで、そちら方面に行く用事があったので足を伸ばしてみた。普段使わない路線に戸惑いながらも進み、せっかくなので高額当選を出した店を歩いて回ることにする。  コロナ禍で、散歩と言う趣味は初期投資も運動靴位のもので経済的。ランニングと違ってマスクをしていても苦しくもならない。まあ、外なら外している人も増えたから気は楽だ。  ニュース記事を参考に地図を見ながら第二第三の宝くじ売り場を目指して歩いていた時だった。 「ビャー」  何か鳴いた。離乳も終え、そろそろ独立するんだろうなってサイズの猫が鳴いた。 「ビャー」  何かを訴える様に鳴く猫。しかし、こちらは宝くじの当選に夢を見るしか出来ない人間。猫を飼う余裕など微塵もない。食べものも持っていない。 「ギー」  猫……だよな? 見た目からして猫だよな? うーん……宝くじ売り場に招き猫って置かれているし、この猫にも何かの力があるかも知れない。 「あのな、今は何も持っていない。不況で自分が食うだけで精一杯だ。だけど、猫と暮らせる家が買える位に宝くじで高額当選したら、そこに猫ベットとご飯、その他諸々を与えよう。まあ、番号発表まで時間は掛かるから、それまでどうするかは知らないけどな」  人気の無いのを確認してから話したが、冷静になってみても変な人間だったろう。だけど、猫と暮らせる賃貸は高く、健康診断にも予防接種にも避妊・去勢手術にも金は掛かる。猫の年齢が上がれば医療費も上がるが、人間の給料はバブルが弾けてから数十年、上がる人は一握り。せいぜい、宝くじに夢を見るしか無いのだ。  猫の縄張りを離れ、宝くじ売り場を回って帰宅。それぞれの店で10枚ずつしか買っていない夢。それでも、買わないよりは当たるかも知れない。何故なら、買わなければ当たる確率はゼロなのだ。  猫のことなどさっぱり忘れ、初めて買った宝くじのこともすっかり忘れ、花粉が飛び始めた頃のこと。猫の声で買った宝くじの存在を思い出した。そして、初めて買ったせいで、調べ方が分からなかった。なので、買った売り場に赴いてみた。 「おめでとうございます」  どうやら、何かしら当選していた様だ。流石に、猫を養う程の金額では無いが、交通費を補う程度には当選していた。あの猫は招き猫だつまたのか、ただの偶然か。分からないけどお礼位は言っても良いかも知れない。
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