兄を殺したのは

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「単刀直入に言います。 中君、うちに来ませんか?」 「俺に、おたくの組に入れと?ご冗談を」 佐渡さんは中さんをヤクザにスカウトしているんだ。 それが中さんへの話だったみたい。 「今回、葵衣ちゃんを助けてあげたのですよ?」 「どういう意味ですか?」 佐渡さんの私を助けたという言葉に、中さんと同じように私も疑問に思う。 「摩天の武山幸太」 「武山がなんの関係が?」 「今回、幸太君が葵衣さんを此処に連れて来てくれたのですが。 俺が葵衣さんを連れて来るように幸太君に言いました。 俺と幸太君とは舎弟関係。 兄貴分である俺がそうやって間に入る事によって、幸太君は葵衣ちゃんに下手に手出し出来ない。 彼は今も中君を敵視しているから、中君の弱みである葵衣さんに何かをされるのは、時間の問題でしたよ?」 「今の武山が、俺とやり合う気があるとは思えませんが? あいつも昔みたいに馬鹿じゃない。 今の俺なんかに絡んで揉めても、なんの特もない」 「まあ。今の君も幸太君も、昔のように暴れたりはしてないですもんね。 まるで牙を抜かれた犬のように大人しい。 でも、わりと幸太君はネチネチとした性格してますからね」 クククと笑う佐渡さんとは違い、中さんの表情は険しくなる。 「俺の盃を受け舎弟となれば、葵衣さんの安全は約束されます。 先程うちに来ないか、と言いましたが、看板は掲げなくても構いません。 中君の会社をうちのフロントにでも」 「断れば、葵衣に何かするんですか?」 「いえ。わざわざ葵衣さんに何かしろ、とは俺は誰かに言いません。 ただ、中君に恨みのある幸太君が、葵衣さんに何をするか」 「…悪いですけど。あなたの盃は受けとれません。 葵衣は自分で守ります」 中さんはハッキリと、そう口にした。
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