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忘れ物
怨霊が蔓延る山の中。少女は苦戦していた。
そこには、高さ5メートル程もある黒い陽炎のような怨霊がいた。
(これは流石に倒せない。封印するしかない。)
大人しく封印されてもらうにも、ある程度の力は削ぎ落としておく必要がある。
手のひらを合わせて指を互い違いに組み、その中に息を吹き込む。
矢のように鋭い、呪いを含んだ風が怨霊に当たる。
怨霊の力が少し弱まった。
私は懐に手を入れたが、、、、
しまった、、、
封印するための呪符を忘れた、、、
怨霊がこちらに向かってくる。
咄嗟に先程と同じ呪術を放った。
攻撃を避けるためか、怨霊は地面を覆うかの様に平たくなった。
(このままじゃ封印できない。倒すしかないけど、こんなに強いのを!?絶対無理!!)
「探しものはこれかな?」
少し高めの男の子の声がした。
振り向くと木の上に15歳くらいの少年が呪符を持って立っていた。
(誰!?封印の呪符??でも私のものじゃないわ)
「あなたも呪術師?封印できるの?」
「できなくはないけど、タダではやらないよ。やってあげたら貸しだからね!代わりに、君は僕に何をしてくれる?」
正直、このままでは怨霊に取り憑かれる。
「何をして欲しいの?」
「うーん、そうだねぇ、、、契約を結んでほしいな」
「契約?」
「そう、僕と結ばれる契約」
私は近づいて来る怨霊を避けながら話す。
相手も私の攻撃に慣れてきたのか当たらない。
「よく分からないけど、これをどうにかできるなら何でもいいわ、、、きゃあ」
怨霊が足に絡みつく。
ゾッと寒気がするとともに、魂を吸い取られていく。
意識を失う直前、彼の冷めた声がした。
「その子に触らないでくれる、、、消えろ」
怨霊が足から離れた気がした。
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