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レストランに着いて、津波が蒼を抱いて店内に入る。ベビーチェアを借りて蒼を座らせ、津波が蒼の食事を見る。伊織も面倒を見たりするが、ほとんど津波が蒼の面倒を見たがる為、伊織は津波に任せている。
「この半年の間に、よく食べるようになったな」
「そうなの。ほんとよく食べるし、よく遊ぶし、よく寝る」
「ふふっ…」
「遊び疲れて食べながら寝る時もあるし…」
「ははっ、そっか。パパより大きくなるかもな」
「うんっ! パパよりおっきくなるっ!」
津波に似ている蒼を眺め、伊織は想像してみた。今は大小の津波 紅が並んで微笑ましいが、蒼が成長するとどんな光景になるのかと楽しみになった。
自宅に帰って、チャイルドシートで寝てしまった蒼を津波が抱いて家の中に入る。子供部屋のベッドに蒼をそっと寝かせ、津波と伊織はソファーでひと息つく。
「伊織、おいで…」
津波が伊織の腕を引き抱き寄せて、ソファーに横になり伊織を上に乗せる。
「お疲れ様。忙しかった?」
伊織は津波の上に横になり、顔を上げて話す。
「あぁ、でも結構いい評価をもらった。セレモニーにはカルロも来てくれて、弟子の成長を祝ってくれた」
「そっか、よかったね」
「うん。伊織、キスして」
「ん…? うん…」
伊織は少し上へあがり、津波の唇に唇を重ねる。そっと伊織の後頭部に津波が手を置き、頭を引き寄せてキスを深くする。
「んっ……もっと…」
津波が舌を絡め、伊織を求める。離れている間、キスをする事も抱き合う事も出来ない分、帰って来ると津波は伊織を何度も求めた。
ソファーからベッドへ移動し、2人は肌を重ね激しく抱き合う。隣の部屋で蒼が寝ているのを気にしながら、2人は何度も抱き合った。
津波が帰国して数週間。リビングのソファーで蒼を膝の上で寝かせたまま、津波はスケッチブックにデザインを描いていた。伊織はコーヒーをカップに入れて、ローテーブルに置く。
「ありがとう」
「うん。新作のデザイン?」
伊織はラグマットに腰を下ろしそう尋ねて、カップを持つ。津波もそっと蒼を起こさないように動き、スケッチブックをローテーブルに置いてカップを取った。2人でコーヒーを飲みながら話す。
「今度、これを出そうかと思っているんだ」
津波がスケッチブックのデザインを指して言う。伊織はカップをテーブルに置いて、デザインを見た。
「えっ、これって……子供服?」
「うんっ。蒼を見てて考えていたんだ『KOU&I』の子供服だけの店」
「ふふっ、いいなぁ。でも、子供はすぐに大きくなるから、価格は安くしてくれないと買えないよ」
「うん、分かってる。蒼もこの半年で大きくなってる。それは十分考えたよ。大人の服の方で十分利益は上がるから、子供服は低価格で出せるようにする」
「それならいいかも」
「親子のペアって言うのもいいな。ふふっ、やりたい事が増えた」
「ふふっ、紅、楽しそう」
「うんっ。毎日幸せで嬉しくて楽しい。伊織のおかげだ」
「ううん。それは私の方。今の幸せがあるのは全部、紅のおかげだよ。蒼が生まれたのも、この家で3人で暮らせるのも全部、紅が私にくれたの」
「伊織……幸せだな…」
「うんっ」
「愛してる」
「私も愛してる」
津波の膝では2人の愛の結晶の蒼が眠り、2人は今あるこの幸せを感じ、これから起きる幸せに胸を高鳴らせながら幸せいっぱいのキスをした。
END
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