出会いは突然に、鮮烈に

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 そんなこんなで、海外からの出張帰りによく使う行きつけのホテルの最上階に位置するスイートルームへと移動したのだった。  その頃には、幼い頃からの付き合いでもある柳本の采配により部屋には奏の着替えはもちろん、酔い潰れてしまった彼女のための諸々も用意されていたが、これもいつものことだ。  誤解を招いてはいけないので補足しておくが、奏がこんな風に女性の同意も得ずにホテルに連れ込むのは初めてのことだった。  それどころか、これまでの経験上、女性に関して苦い経験しかないため、ここ数年は女性を遠ざけてきたくらいだ。  そういう背景もあって、奏自身少々舞い上がってもいたのだろう。  でなければ彼女に妙な勘違いをさせることもなかったのだろうが、奏にそんなことに気を配るような余裕などなかった。  それほどに必死だったのだ。  いくら彼女が寝苦しそうにしていたとはいえ、酔い潰れた女性の衣服を寛げるのは憚られたが、起きる気配がなかったためジャケットとブラウスのボタンだけを緩めるに留めた。  それからシャワーを浴びて柳本が用意してくれていたワイシャツとトラウザーズに着替え寝室に戻ると、ちょうど彼女が目覚めたところだった。
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