クリスマスの魔法

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 後日、フレディーはオスカーに、あの噂の所在を聞いた。  どうやらオスカーは、どこかのカフェで聞いた話を、そのままフレディーに伝えたみたいだった。だが、その相手が誰だったのかは、オスカーも覚えていないようだった。  誰とでも仲良くできるオスカーのことだから、そういったこともあり得るだろうとフレディーは思ったが、もしかしたらそれは、クリスマスの使いか何かだったのか……。  それに、この街の人々は、どこか勘違いをしている。「クリスマスの魔法」というのは、誰にでも訪れるわけではない。心清らかな男女が願うことで、初めて降りかかる、不思議な魔法なのだ。人々が、心からクリスマスを祝い、互いを慈しみあえるように。    フレディーは、心優しい男性になった。最初こそ皆驚いた。けれど、少しずつ皆彼を受け入れていき、少しずつ彼は周りに愛されていった。兄とも縁を取り戻し、今は共に、孤児院への支援をしながら、兄の自立も支えているらしい。そんな彼の変化を、確かにメイベルもすぐ近くで見ていたはずだ。  1年後のクリスマス。フレディーとメイベルは、正式に結ばれた。心清らかな男女の、素敵な愛の契りだった。そして再び噂となり、街を巡るのだ。この街に存在する、「クリスマスの魔法」の噂話が。 (終)
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