8.変わる世界

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 先帝の簡素な葬儀から、アレックスの即位式までは3カ月かかった。けれど告知から3カ月というのは短いと言わざるを得ないだろう。  だから、招待したのは隣国の王族・貴族のみ。海を超えた海洋国や山をいくつも超えた遠方の国には報告のみとなった。 「……俺の衣装なんてどうでもいいんだが」  いつもは略式衣装しか着ないアレックスも、今日は正装だ。ゴシック調の白を基調としたジャケットはカフが大きく、全体には金糸や銀糸の刺繍が施されている。肩からは豪奢な深紅のマントがかけられ、彼の金髪の上には大きな宝石をふんだんにあしらった王冠があった。 「そういうわけには参りません。今日だけは正装を」  髪の白い年配の侍女にそう言われ、アレックスはため息をついた。 「失礼します、陛下。とお呼びすべきでしょうか?」  不遜なセリフにアレックスは不機嫌になることもなく、笑う。
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