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その探偵は、人通りがあまりない場所に事務所を設けている。 春風佐葵は、珈琲を片手に持ち新聞を読みながら静かな朝を迎えていた。 「ふぅん? 咲耶さん、女優さんになったんだな」 「佐葵、おはよう? 今日は依頼入ってるの?」 「真葵、おはよう? 今日は1件だけ入ってるけどすぐに解決出来ると思うよ」 「ふふっ スッカリ黒の探偵の榛名さん2号みたいになっちゃったね?」 「榛名くんにはまだ及ばないよ?」 「でも、開業してもう6年だよ? スッカリ榛名さん化してるよ」 そう告げて部屋の掃除をしているのは、春風真葵。 結婚してから3年になるがまだ子供には恵まれていない。 「ねぇ、真葵?」 「んー?」 真葵はハタキを叩く作業をストップさせて振り返ると、佐葵がいつの間にか後ろにいた。 「…?! 佐葵、何?」 「子供欲しくない?」 「は?」 「ほら、もう3年だし?」 「それはそうだけど… 授かりものでしょ?」 「うん? でも、真葵欲しくない?」 「…佐葵は欲しいの?」 「そりゃね? 真葵の子だったら、絶対可愛いし」 「…そ、そうかな」 真葵は何となく俯くと、佐葵はそんな反応が気に掛かる。 「真葵、何か隠してない?」 「…?!」 「最近、あんま食べないし… 具合悪い?」 「えっと、少し疲れてるだけだよ?」 「本当に?」 佐葵がソファーに座らせながらそう告げると、真葵はまた俯く。 「真葵?」 「…えっとね」 「うん?」 真葵が真実を打ち明けようとしていると、豪快に事務所の扉が開いた。 「真葵、おめでとう!」 「美葵?!」 「ふふっ おめでたい」 美葵は真葵にギュッと抱きつくと、佐葵は目をパチクリさせて扉付近に立っていた港と目を合わせた。
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