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高校一年生
「陸上部の誰を見てるのかなー?」
「わぁー、もうビックリするでしょ! 背後霊みたいに音も立てずに後ろにくっつかないでよ!」
親友の林美智子が、いつの間にか後ろに立って私と視線を合わせるようにグランドを見つめていた。
「はははっ、そんな驚かないの。教えて、誰が気になる?」
私は顔を背け、目を逸せて誤魔化した。
「別に誰ってことないよ」
「またまたー、隠さなくてもいいじゃん。当ててあげようか?」
「結構です!」
「うーん同じクラスの子だと思うから中島くんかな、背が高くて爽やか、一番人気だよ」
「違います!」
私は見た目だけでは判断しない、どちらかと言えば内面重視だ。
「えっ、違うの? まさか広中くんじゃないでしょ、色黒でガッシリした体型だから陸上というよりはラグビーって感じだよね、彼は大穴だからあまり勧めないよ」
「広中くんに失礼でしょ!」
「いいの彼はそういうキャラなんだから、でもそっか違うのかー、後は、、まだ他に同じクラスの子いたっけ」
「同じクラスとも言ってませんけど」
そんな詮索はしなくていいよ、まだ自分の気持ちも不確かなんです、、
いつも気づけば、教室にグランドに彼の姿を追い求めている自分がいる、
この気持ちが何なのかを確かめたくて、私は放課後グランドの外周を駆ける陸上部の練習を遠くから眺めていた。
そう、私の視線の先には、ひとり黙々と走り幅跳びの練習をしている男の子がいる。何度も助走を繰り返しては、ベストのタイミングで踏み切れるようスタート位置を少しずつ変えては調整しているみたいだった。
翳り始めた夕陽に照らされながら、校舎横の花壇に腰掛け、グランド全体を見ているふりをして、さり気なく視線を送る。
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