バケモノ狩り

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バケモノ狩り

それから数日経ちました。 国で一番大きな広場に木の檻が置かれています。そこには沢山の人が集まって檻の中を覗いています。 檻の中にはあのバケモノが入れられてました。 檻の中のバケモノの姿はとても酷い状態でした。顔は赤黒く腫れ上がり、骨が折れているのでしょう左の足はおかしな方向へ向いています。 あの日バケモノに出会った少女は家に帰ると怯えながらバケモノの話しました。「この世の者とは思えない程醜い者に会った」と言った言葉は人から人へ伝わる度に変化をし、最後には「卑しいバケモノが女の子を襲い、自分達の花を勝手に盗んでいる」という噂が国中に流れていたのです。 その噂は王様の耳にも入ってきました。お金になる花は王様にとっても大事な物になっていましたし、汚い物や醜い物が自分の国に居る事が許せない王様は『バケモノを捕まえたものに褒美を与える』と国民に伝えました。 それを聞いた国中の人びとが『バケモノ狩り』に夢中になっていったのです。 皆、血眼になって国中を探しました。 勿論花畑がある湖は沢山の人がやって来てはバケモノを探します。 大切な花畑は沢山の人に踏まれていきました。 そして遂に見つかってしまったのです。 その日バケモノは花の世話を終えて眠ろうとしていました。 その時急に大勢の知らない男たちが入ってきてバケモノを見ると「居たぞー」と大声でさけびました。そしていきなり木の棒や石で殴ったり蹴ったりし始めました。 今までのことを全て見てきた風は物凄い強風を起こし怒りました。 湖は波を立てて泣きました。木々は枝を揺らし「やめろ」と訴えました。 でも誰一人風の怒りにも、湖の悲しみにも、木々の悔しさにも気付く者はいません。 その内、誰がバケモノを見つけたかで仲間同士が喧嘩をし始めました。お互いをバケモノと同じ様に殴ったり蹴ったりして…。 そして、一番力が強かった大きな男が、血まみれになり動かなくなったバケモノの髪を引きずりながら勝ち誇ったかの様に大笑いしながらお城へ連れていったのでした。 お城に連れていかれると、お城の庭に放り投げられました。 王様は城のバルコニーから動く事も出来ない無残な血だらけのバケモノの姿を見ると顔をしかめ羽根の扇子を広げて顔を隠すと直ぐに立ち去りました。 「 死刑 」 と一言残して。 死刑を執行するまでの間、バケモノは木の檻に入れられて見世物として晒されているのでした。
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