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よくある前世の思い出し方
「要、ああ僕の可愛い要!!目が覚めて良かった、階段から落ちるなんて本当に心配したよ」
「要ちゃん…!!頭を打っちゃうなんて可哀想に、痛かったわよね!!」
目が覚めた俺の顔を心配そうな顔で覗き込む両親。父は細縁の眼鏡をかけた理知的な美形でクールに見えるその顔をくしゃくしゃにして俺の体を抱きしめた。その父の隣にいた母は、年齢が分からないほど若々しく美しい美貌を曇らせながら俺のおでこを確認している。
いつもなら、両親大好きっ子の俺は二人に抱きついて痛かっただの何だの言ってギャン泣きする。のだが、今はそんな気は毛程も起きない。はっきり言ってそれどころじゃない。
「か、要……?どうしたの?いつもは泣いて飛びついてくるのに」
「要ちゃん、体調が悪いの?」
泣きもしない俺の異変に、二人が青ざめた顔で俺を見る。俺はそんな二人にぎぎ、とまるで錆びたブリキ人形のようにゆっくり顔を向けて言った。
「俺って、最初に刺されて死ぬ成瀬要だったんだ」
「びょっ、病院っ!!病院に連れて行かないと!!要が頭を打って混乱しているようだ!!!」
「要ちゃんしっかりして!!!」
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