第五章 犯行動機

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「そこが違うんだ。フクロツルタケが混入していたのは少量だった。それは毒キノコを食べてからしばらくは直に症状が現れていなかったことからも間違いない。そんな嫌がらせをしたら直から恨みをかってそれこそみんなに過去のことをバラされかねないじゃないか。過去のことを本気でバラされないようにするなら嫌がらせではなく口を封じなければ意味がないんだよ。  でも、犯人は致死量の毒キノコをいれてはいない。つまり、花音は毒キノコを入れた犯人では無いということだよ」  あきらは陽太郎の言葉に不快感を隠そうともせずに顔をしかめる。 「結局犯人はわからないってことか?」 「……そうでもないよ」 「犯人がわかったのかっ!」  あきらが声を荒らげて用途楼に詰め寄る。その勢いに押されながらも陽太郎はうなずく。 「まず、岳人も違うと言える。岳人が直に知られている秘密は岳人の病院が夏の両親の死に関わっていることだ。これも、花音の時と同じことが言える。直に嫌がらせをしても秘密を漏らさないことにはならない。むしろ報復として秘密をバラされる恐れがある以上毒キノコを入れるメリットがない」
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