一話 晴れのち飴

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 そして、我が家ではリモコンがなくなったのはそれが最後である。  めでたしめでたし。  ああ待って!まだ話終わらないよ!画面閉じないで、ちゃんと最後まで読んで!  それでは、閑話休題。  私は、セーラー服を身にまとい、学校指定のカバンを背負い込んだ。もちろん、犬のプリンを撫でるという私の目の保養も忘れてはいけない。「行ってくるね。ちゃんと大人しくしているんだよ?」と、伝わるはずもないのに話しかける。 「心音(ここね)、今日は飴が降るらしいから傘持っていきゃーよ」と、お母さんが台所から叫んだ。 「はーい……?」  違和感。違和感違和感。  お母さんまでどうしてしまったのか。飴が降るなんて言うようになってしまって。もしかしたら、おかしいのは私の方かも知れない。パラレルワールドに迷い込んだ、なんて厨二病の大好物なシチュエーションに身を置いてしまっているのか?  しかし、傘は持っておくに越したことはない。無くて困ることはあっても、あって困ることなどない、素晴らしい代物である。  こんな素晴らしさを広めるために、宗教でも開きたくなる。宗教の開祖なんて厨二病が好きそうじゃないか。  そんなことを考えながら、私は水色の傘を手に取った。それから、行ってきますーと叫んでから家を飛び出した。  私は、まだ知らなかった。  この後に、街中を巻き込んだ大事件が起こることを。
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