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プロローグ
アルファがいる。
ハレムの一角。灯りもない暗闇に一歩足を踏み入れた瞬間、おれにはわかった。
次の瞬間、体は甘い痺れに捕らわれていた。逃げなきゃ。そう思うのに、足がいうことをきいてくれない。
「……おまえは一体、なんだ?」
豪奢な織のカフタンに身を包んだスルタン――アスラン・イルディミールが問う声は、苦しげだった。
戸惑いに満ちた空気の匂いは、一瞬で隠微なものに変わる。
逃れられない。
信じられないくらい体が疼いて止められない。
頭では否定しているのに、魂は欲している。
これから、この男に抱かれるのだ。
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