6人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
瞳子
「はぁ〜、幸せ」
女は猫カフェにいた。
癒しに飢えていた頃ここの猫カフェを偶然見つけ、ふと入ってみると想像以上の癒し空間であった。
猫カフェの猫はあまり相手をしてくれない事も多いが、そんな事は構わない。
猫達と同じ空間に居られるだけで充分だ。
気づけば女は猫カフェに通い詰めるようになっていた。
女は霧島 瞳子という。
自宅アトリエで、ジュエリーデザイナー兼彫金師をしている。
28歳、彼氏いない歴4年。
一人暮らし。
寂しさにも慣れてきたところで今度は癒しが欲しくなり、猫カフェの常連客となった。
猫と遊んだりする事はせず、もっぱら眺めているだけだが。
この日もまた仕事の合間に猫カフェに来ていた。
なんとなく今日は猫に近づいてみようと思った。
グレーの猫をそっと撫でると、柔らかな毛並みが大変心地よかった。
(あぁ〜、モフモフ)
気付けば撫ですぎていたらしく、グレーの猫は去ってしまった。
(ストレスになっちゃったかな、悪いことしたな)
瞳子が反省していると、足元に白い猫が擦り寄ってきた。
「可愛いー‼︎撫でてもいい?」
白い猫にお伺いを立ててから撫で始めると、白い猫が瞳子の手を舐めた。
ズキューーン
その瞬間、瞳子の心は射抜かれた。
(この子すごく接客が上手…!猫と暮らしたら、毎日こんな想いができるのかなぁ)
猫と…暮らす…
瞳子の頭に今までにはなかった考えが浮かんだ。
最初のコメントを投稿しよう!