0.この度(契約)結婚します!

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「マーガレット様。クローヴィス様がいらっしゃいました」  一人悶々と考え込んでいれば、控室の扉がノックされシスターにそう声をかけられた。  そのため、マーガレットは「どうぞ」と返事をする。すると、一人の美しい男性が顔を見せた。  いつもとは違い撫でつけられた漆黒色の髪と、鋭い漆黒色の目。背丈は高く、顔にはいつも通りのにこやかな笑みが浮かべられている。 「マーガレット嬢。この度は、結婚話を引き受けてくれて感謝するよ」  彼はにっこりと笑ってそう告げる。  その口調はまるでビジネス現場での取引のようなものだ。そう思ってしまうが、その考えもあながち間違いではない。 「こちらこそ、実家への援助感謝しますわ。おかげさまで、お父様も弟も無事生活が出来ております」  立ち上がり深々と一礼をすれば、クローヴィスは「かしこまらなくてもいいよ」と優しく声をかけてくる。 「キミには今後とも利用価値があると思っているからね。……どうか、よろしく頼むよ」 「はい。私とて、与えられたお金の分はしっかりと働かせていただきます」  どちらともなく微笑み合い、そんな会話を交わす。  その後、しばらくしてクローヴィスはゆっくりと口を開いた。 「――じゃあ、行こうか。……俺の、契約上の妻」  マーガレットの手を取り、クローヴィスは微笑む。その微笑みは、見惚れてしまうほどにとても美しいものだった。
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