第六話 雑煮

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* 「ラスボスだね」 と、白ワインのグラスを置いて、響は笑った。 今日は響と夕食に来ていた。カジュアルなイタリアンで二人で食事をするときの定番のお店だ。響の知り合いがマスターでとても感じのいいお店なのだ。 いつもの奥の席でお試しルームシェアの一部始終を話すと、響は楽しそうに「ラスボス」と言った。 「ラスボス?」 「そ。今回のことは今までが順調すぎたんだよ。だからラスボスがいるくらいがちょうどいいんじゃない?」 「それは確かに」 本当に全てが順調で、これでいいのかと思うことはあった。だからひとつくらい壁があっても不思議ではない。それは乗り越えるべき壁なのだろう。 天馬さんを思い出すと、確かに魔王的なラスボス感がある。 「ラスボス攻略頑張って。せっかくやる気なんだからいけるよ」 「攻略法が何もわからないのは辛いけどね」 「そこはやっぱりもう一度結城さんに聞くしかないんじゃない? こんなふうに悩んでることも含めて伝えた方がいいと思うよ」 響はいつも直球で、背中を押してもらえて助かる。 「だよねぇ。やっぱり帰る前にちゃんと聞けば良かった」 「時間が経って気づくこともあるんだし、これから聞けばいいじゃん」 「ありがとう。ちょっと話す機会作ってみる」 「そうだ、私も報告したいことがあるの」 そう言って、響はにっこりと笑った。今日食事をしようという話が出たとき、響も話があると言っていた。 「なになに? なんか良い話っぽいね」 「実は、彼氏ができました!」 「えー! それはおめでたいね。どこの人? 仕事関係?」 「ううん、仕事は全然関係ないよ。でも出張中に出会ったから、少しだけ遠距離なんだよね」
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