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――落ちた先の森の中で、アンナはヨロヨロと歩いていた。
「た、助かって良かった……」
落ちる直前に防御魔法を使ったため、怪我ひとつしていない。だが、とんでもない高さから落ちたため、ショックで動悸が止まらない。
「なんで飛べる能力がないんだろう……」
空を見ながらポツリと呟く。
聖女が女神から与えられた能力には空を飛ぶものはなかった。
もし女神に会う機会があったら打診しようと決め、とりあえず皆と合流するためにフラフラする足を動かす。しかし、どちらに向かえばいいのかわからない。
それでもアンナは皆に会うため、進んで行くことにする。
――しばらくして。
ぐぎゃぉぉぉぉ〜。
低い魔物の咆哮のような音が森に響き渡った。
「……お腹空いた」
アンナは小さく嘆く。空を見ると真上にあったはずの太陽は傾き始めていた。
先ほどの奇妙な轟音はアンナのお腹の音である。
アンナの体は燃費が悪く、1食でも抜くとすぐにふらついてしまうのだ。
「何か、食べ物……」
緩慢に首を動かすが、食べれそうなキノコや木の実は見当たらない。
アンナは小石につまずいてパタリと倒れた。
「フフフ……地面って意外と寝心地いいのね」
空腹で錯乱して訳の分からないことを言ったアンナは、そのまま起き上がることをせず気を失うのだった。
――近づいて来る気配にも気づかないまま。
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