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そこに大地もやって来て、
「あれ、もう食べ終わったの?!ステーキ見たかった!!」
と言って私たちの食べたお重を覗き込んでいる。
「どんだけみんな見たいのよ」
「ほんとほんと。てか、大地、早くない?!まだ7時前よ」
お義母さんがお重を片付けてくれていると、気配り上手の咲也くんが手伝ってあげている。流石だ。大地は私に歩み寄り、頭をポンポン軽く叩いて、
「美味かった?」
と訊ねると、私はそんな大地を見つめて、クスッと笑ってしまった。
「激うまでした!!」
「いいなぁ」
咲也くんと大地が声をそろえると、お義母さんは壁際にあるテーブルにお重を置いて振り返り、咲也くんたちを見た。
「出産という大仕事をやり遂げたんです。これくらいのご褒美は、当たり前よっ!」
お義母さんの言葉に、みんなは「確かにぃ」と呟いて納得している。そして大地は私の横に座って手を握りしめて締めてくれると、
「体調は?出産の後も辛いとか聞くけど」
と静かな口調で訊ねるけど、私と光莉は頭を横に振った。
「そこまでは…ね」
「うん。あ、でも、聖香、今日ちょっと具合悪そうだったよね」
「そうなの?!」
光莉の言葉を聞いて、大地は私の頬を両手で包み込んでくる。けど、今はもう元気。私はニッコリ微笑んで頭を横に振った。
「無理しないでくれよ」
「大丈夫よ」
大地は心配そうに私の肩をグッと抱き寄せて甘えてくる。なんか、素直で可愛い。
「あら。大地、すっかり従順な感じね」
お義母さんも驚いている。と、咲也くんはクスッと笑った。
「あの修羅場を見たからねぇ。そりゃ色々、悟るよね」
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