Lesson.4

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久住が不思議そうな顔をしていると、近藤はポケットからスマホを取り出した。 健康診断の結果に書かれている久住の年齢を読み上げる。 「うちの長女と同い年なんやなぁ。娘も薬剤師でな、今は病院で働いとるんや」 「すごいですね。私の母も薬剤師で病院勤務でした」 「それは奇遇やな。久住くんは病院行かなかったん? やっぱりMRのほうが給料高いから?」 近藤は悪びれもなく、久住にそう聞いた。 学生時代にも関西出身の同期がいたので、懐事情を聞かれるのは慣れっこだ。 現場には向いていないが、薬に携わる仕事をしたかったので、就職を決めたのだと話した。 給与は同年代よりもプラス一回り程度はもらっているのだが、その分仕事の責任は重く忙しい。 「久住くんほんま真面目でおもろいわぁ。娘も久住くんに負けないくらい真面目でなぁ、仕事ばっかりやわ。彼氏の一人も紹介してくれへん」 近藤は楽しそうに愚痴を連ねた。今日は午後からの診察も在宅の往診もなく、近藤はよく喋る。 口下手な久住にとっては、無口で虫の居所が分からない気難しい医師よりも、相槌を打って機嫌を取れる医師を相手にするほうが楽だ。 「今度な、うちの娘にも言うとくから、二人で美味しいものでも食べてきたら?」 「……はい?」
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