Lesson.1

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Lesson.1

「お疲れさまです」 本日二回目の二時間の講義を終え、多希(たき)はタイを緩めながら自分のデスクに座った。 講義前の準備も合わせれば、三時間程は立ちっぱなしだったので、腰が少し重い。 多希が受け持つ生徒は、ほとんどが子育てを一段落終えた主婦達だ。 「今度友達も誘ってみようと思って」と言われれば、さすがに無碍にはできない。 今日も無償サービスの三十分を捧げて、多希は講師陣のデスク部屋に戻ってきた。 他の講師陣は事務作業を終え、すでに帰る支度を始めている。 「今から飲みに行きません? 新しくできたイタリアン」 「あー、いいですね! ……由衣濱(ゆいはま)さんも、よければどうですか?」 義務的に一応声をかけた、という気配りに、多希は笑顔で答える。 「まだ事務作業が残っているので、気にせず皆さんで行って来てください。いつもすみません」 「い……いえいえっ! 由衣濱先生、人気で忙しいですもんね」 そして、彼女達が行ってしまう前に、見せつけるように多希はタイムカードに打刻する。
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