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この間会ったからなのか、元々僕ならと思っていたからか、彼女は微笑んでいる。そんな彼女を僕は抱きしめた。愛おしくて。
「もう離さないから。これからは一緒に居よう」
「それってプロポーズみたい」
「それでも構わないよ」
「こんなに美しい風景で言われると、嬉しいな」
彼女が眺めたのはもう一面真っ白になっている雪原だった。これはかなり力の強い魔法だ。こんな力がなかったら僕の魔法は効力を得なかったのかもしれない。これは特別な日だった。
「あまり時間は無いよ」
魔法の扉を挟んで話をする。いつまでもこうしては居られない。魔法だって無限の力はないのだから。
「そうだね。戻らないと」
僕の目的だった事を彼女が理解をしている。そして叶うんだ。けど、問題も有った。
「それが、時空魔法って基本攻撃魔法だから、一方通行なんだ。施行者の方から誰かを戻すことはできない」
「となると、私は戻れないのか」
ちょっと彼女は落ちてしまった。僕が会いたかったのと同じく彼女も僕のことを願ってくれていた。
「じゃあ、さよならの言葉を言わないとだね」
彼女が涙を落として無い時間を理解して会話をしている。
「この魔法には対象者も必要なんだ。そしてそれは僕」
「君まで戻れなくなるよ」
「構わない君が居るなら」
僕の言葉に彼女は微笑むとまた抱き着いた。
「こっちの世界も悪くないよ」
「特別な一日を眺めて」
僕は彼女に魔法の力の雪景色を知らせた。そして扉を潜り彼女と並ぶ。雪はまだ降っていて荒れた土地を綺麗に白く覆っていた。
会えないと思っていた彼女と見られる筈もない光景を眺めている。とても綺麗で嬉しい。これ以上に特別な一日なんて有るのだろうか。
「戦う所がこんなに美しいなんて解らなかった」
眺めながら呟きを聞いて静かに扉を通っている。
おわり
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